地震や豪雨などの大規模災害が発生した際、人々の命の砦となるのが災害支援ナースだ。彼らは都道府県の看護協会の災害支援ナース養成研修を修了し、登録を行ったうえで活動している。派遣される被災地では、ライフラインが途絶えた過酷な環境下となるため、人々の健康状態を正確に把握するアセスメント能力が試される。特に、刻一刻と状況が変化する現場においては、今何が必要かを瞬時に見極める力が不可欠となるからだ。

混乱が続く避難所での活動は、直接的な医療処置だけにとどまらない。段ボールベッドの配置を工夫してエコノミークラス症候群を未然に防いだり、衛生的なトイレ環境を整備したりと、生活全般のケアも幅広く担っている。同時に、不安に震える避難者たちの心のケアも求められる。それはすなわち、看護の原点ともいえる、健やかな生活環境を整える力そのものが問われる現場といえるだろう。

被災地での活動は、教科書通りの看護が通用しない場面の連続となる。断水や停電といった不自由な状況下で、いかにして清潔を保ち、二次被害を防ぐか、その創意工夫こそが看護の真髄であり、災害支援ナースとしての腕の見せ所となる。また、現場では、行政やボランティア団体、自衛隊など、立場の異なる多くの組織が動いている。その中で看護の専門家として被災者の権利を守り、必要な支援をつなぐ調整役を担うため、高度なコミュニケーション能力とリーダーシップが育まれるだろう。

災害支援を経験した者は、派遣期間を終えて日常の業務に戻った後、物事を多角的に捉える広い視野を手に入れていることに気付くはずだ。誰かの絶望に寄り添い、共に希望を探した経験は、看護師としてのキャリアのみならず、人生観すらも変える、深い哲学を与えてくれるに違いない。