大海原を旅する豪華客船には、乗客と乗組員の安心・安全を一手に預かる船内診療所が設置されている。その中で働くシップナースという仕事があるのをご存知だろうか。実際の現場は、華やかな旅の安全・安心を支える、徹底したプロフェッショナルな業務の連続といえる。もし、数千人が過ごす閉鎖的な船内環境において、ウイルスが持ち込まれれば甚大な被害を招きかねない。そのため、目に見える怪我の処置以上に、船内全体の衛生管理や厳格な感染対策を統括する司令塔としての手腕が問われる。
シップナースは、限られたスペースと医療資源の中で、船内の医師と共に迅速な判断を下さなければならない。業務中には、極めて高い自律性が求められる。そもそも寄港地以外の洋上では、外部の助けを即座に呼ぶことはできない。よって、急患発生時のトリアージから、慢性疾患を持つ高齢者のケアまで、その業務範囲は実に多岐にわたる。
シップナースとして働く最大の魅力は、広大な海を眺めなら看護に従事できる点にあるだろう。また、さまざまな症例に立ち会うため、幅広い対応スキルを磨けるのもメリットだ。診察室での救急処置や医師不在時の緊急対応などもあり、一般的な病院の看護の枠を超えた、ジェネラリストとしての柔軟性を身につけることが可能となる。
また、長期航海を共にする中で、乗客一人ひとりと信頼関係を築けるのもこの仕事の醍醐味だ。旅の時間をより安心なひとときに変える重要な役割を担うため、自然と頼られる存在となる。もちろん責任は重いが、下船時にかけられる心からの感謝の言葉は、働き続けたいと思える原動力になるはずだ。海の上という特殊なフィールドで働いた経験は、看護師人生において一生の宝物になるに違いない。